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3DプリンターMAESTROは発売開始以降、たくさんのユーザー様より御支持頂いております。

今回は3DプリンターMAESTROを実際にお使いになっていらっしゃるお客様にインタビューを行い、お声を頂戴しました。

 

3Dプリンターの運用に関してや、MAESTROを使ってみたいとお考えいただいている方の参考になるお話が盛りだくさん。

皆様のご参考となりましたら幸いです。


宮城県にお住いの清水様より

3Dプリンターの運用やMAESTROについてのお話を伺いました。

今回のプロユーザー

 

清水 聡彦様

 

自作の3Dモデルを3Dプリンターで製作し、海外へ販売を行っているエンジニアさんです。

多数の部品で構成される大型航空機等のプラモデルパーツを次々と商品化していらっしゃいます。

 

公式サイト

http://one-man-model.main.jp/index.html

フェイスブック

https://www.facebook.com/profile.php?id=100005590215920

 


<3Dプリンターの使用用途について>

-普段3Dプリンターはどのような用途で使用されていらっしゃいますか?

 

今はプラモデルパーツ(1/72の航空機や鉄道模型など)の作成に使用しています。

そして将来的には小型ロボットや実用機械の部品を作りたいとも考えています。

 

作成したプラモデルパーツは、欧米のユーザー様(主にモデラーの方々)に向けて販売を行っています。

 

フェイスブックでの個人取引やeBayのような販売サイト等が販売経路です。

 

 

-どのような経緯でこのビジネスを始められたのですか?

 

私は物と機械に関わることを学ぶのが好きで、一人で完結できる仕事をしたいと思っていました。

そしてそれを実現するために様々な知識を学んできました。

(機械系学問の習得をベースとし、自衛隊でレーダー整備を学び、電機メーカーで自衛隊や海保向けのコンソール、EO装置、各種筐体の設計や解析業務等も覚えました。欧米での販売事業のために英語の読み書き(TOEIC910)も勉強しました。) 

 

最終的に携わりたいと考えているロボットの設計事業には費用が掛かるので、まずは知識とスキルを生かせる模型分野でビジネスを始めることにしました。

 

会社で働いているときから徐々に準備を行い、3Dプリンターとカッティングプロッタを購入し、プラモデルの試作と少量の試験販売で失敗と経験を積んでから、独立したという流れです。

 

 

-海外への販売との事ですが、開始して以降評判は如何でしょうか?

 

概ね上々であると感じています。

 

大手のプラモデルメーカーが出さないようなマニアックな大型モデルを出している上、他メーカー(Amodelやmach2など)の少量ロットの製品よりも低価格。

部品の合いがバキュームキットやレジンキットよりもよく、比較的作りやすいといった点が評価を得ている点だと思います。

 

お客様からのカスタマイズ要望にも、技術、価格的に応えられる範囲内で応じています。

(例えば「表面のパネルライン無しバージョンがほしい」等の注文が来ることがあります。)

 

 

※以下、製品の写真と製品のアピールポイントを頂戴しましたので、掲載します。 

 

1/72 YS-11A


1/72 YS-11J


1/72 G-ALUN サンダース・ロー プリンセス


<商品のアピールポイント>

複雑形状の胴体の内面を薄肉でくりぬいたモデルで、内面にモールドやボス穴などを作れます。各種模型キットのカスタマイズやコンバージョンキットにも対応。

 

<製作時のノウハウ>

ABSでなるべく変形や収縮が小さくなるようにパーツ割り、プリント方向を検討し、航空機の胴体、ナセル、翼胴結合部などの複雑形状もCADで効率的にモデリングします。3Dプリンター出力時は、模型のパーツの薄肉化につとめ、積層ピッチを最適化することでプリント時間の短縮と材料費の圧縮を考慮しています。複数台所持しているプリンターそれぞれの特性を加味してプリント作業を割り振り、複雑形状なモデルでもなるべく少ない操作で比較的軽量に作ることできます。

 

 


<実際の出力内容についてのご質問>

 

-内装まで作り込まれていて、非常に精巧です。どういった印刷設定で印刷を行っていらっしゃいますか?

 

ABSをメインとして使い、積層ピッチは0.15mmでの印刷が多いです。

高精度が必要な部分は0.1mm、 低精度でいい場所であれば0.2mm、と使い分けをします。

材料にはPS, HIPS、PETG, PLAも使ったことがあります。

 

PLAは何年もたつと強度低下するので耐久性の関係で、模型の量産には合いません。

モデラーには購入後5年10年と時間が経ってから作り始める人もいるため、耐久性のある樹脂が必要です。

将来的にはもっと高強度と耐摩耗性をもった樹脂が必要になるでしょう。

 

なお、表面は問題なければそのままで販売しています。

スポンジやバリが出て表面の状態が悪ければ、サンドペーパーをかけたうえで油性クリアーを塗布して処理しています。

模型部品のボス穴や円形の窓部分はドリルで穴空けを行っています。

場所によってはステッカーを張り付けて表面を覆うようにすることで綺麗に見せられます(1/72 YS-11A, YS-11J)。

 

以前は表面処理にアセトンやXTC-3D等も使っていましたが、アセトンは有毒ガスを吸うのが嫌なのと、XTC-3Dはこちらも有毒な上、2液混合で手間がかかり、塗膜を均一にしようとすると塗布回数が増え、乾燥時間もかかるため現在は使っていません。

 

 

-モデリングソフトはどういったソフトをお使いですか? また、どのようにして使い方を学ばれましたか?

 

3DCADのAlibre Designを2014年から使用しています。以前は会社でPro/E(Creo)を使っていました。

エラー対処や複雑形状のモデリングも試行錯誤を繰り返して習得しました。

3DCADのノウハウは一度習得すれば基本操作はどれも似ているので、別のモデリングソフトを使用する際も

スムーズに使い始めることが出来ます。

 

 

-ところで、プラモデルパーツの作成と言えば3Dプリンター以外にも様々な方法が考えられるものですが、

 3Dプリンターをメインに使用しようと考えられた理由は一体どういった点にあるのでしょうか?

 

現状、一人で安く柔軟に模型の製造を行うのに最も適した機械は3Dプリンターだと思います。

(ちなみに次に大事なのはカッティングプロッタ。)

3Dプリンターを選んだ理由は、ランニングコストの安さと自由度の高さです。

 

詳しく申し上げると、

 

・初期費用とランニングコストがそれほど高くない

・バキュームやレジン型の製品に比べて比較的安く作ることができる。

・1個ものから大量生産まで、幅広く対応可能である。

 (確実に大量に売れるなら樹脂流動解析~金型作成を行い量産しますが、何個売れるのかわからない場合に

  金型を使うのは非常にリスクがある。)

・独力、自己完結で構想、設計から最終製品までやれる。

・金型が必要なく、後でCADデータの修正をしたりカスタマイズをする事が可能。

・幅広い樹脂が使用可能。模型だけでなく樹脂部品全般が作れるため将来の実用製品開発へも応用の幅が広がる。

 

 といったところです。 

 

 

-実際に3Dプリンターを使用するようになり予想と比べて特によかったと思う部分と、

 逆に不利だと思う部分は何かありますか?

 また不利に思う所があるならば、参考までにどう対策されていらっしゃるかもお聞かせください。

 

運用前から考えていた利点とは別に、

 

・小さい部品は比較的短い時間で大量に作れる。

・型がいらないので樹脂流動解析や金型設計のノウハウ不要。(反面、プリント時の収縮対策のノウハウが必要。)

・抜き勾配やランナー不要で複雑形状がモデリングできる。

・安いABSもノウハウを積めばちゃんと使える。

 

といった点が良かったと思う点でしょうか。

逆に不利な点としては、

 

・プリントに時間がかかる。(品質と造形時間はトレードオフである。)

  → 薄肉化による造形時間短縮と、更には材料節約を頭にいれて部品を設計する必要がある。

 

・積層痕が必ずある。

  → プラモデルにサンドペーパーやステッカーを添付することで対処。

 

・樹脂が収縮して反ってしまう。

  → 反りにくいパーツ割にする。縦方向にスプリットを入れる。捨て板部分を作って造形後カット。

  底面の面積を抑える。等の対処法がある。

 

・ひび割れが時折起きる

  → 冷却を押さえるかゼロにする。起きたところは仕方ないのでパテで埋める。

 

・慣れていても予想外の故障や不具合が時折発生して戸惑うことがある。

  → 白物家電並みの信頼性が理想です。

 

・造形してみないと分からない形状があり、材料が無駄になることがある。

 

 などが考えられます。 



<MAESTROについてのご質問>

 

-現在、清水様はMAESTROの他に3Dプリンターは何台位お使い頂いているのでしょうか?

 

MAESTRO 2.0、MAESTRO 2.5EX、Zortrax M300、L-DEVOを各1台ずつ所有しています。

各々に得意不得意があり、量産も新規商品のための試作もあるので、これらのプリンターを組み合わせて運用しています。

 

-3DプリンターMAESTROをご購入いただきました経緯について教えて下さい。

 

当時、模型用途に使える3Dプリンターを探していました。

インターネット上で検索していたらMAKUAKEのマエストロのサイトにたどり着き、造形品質が高いという宣伝と、先着購入割引があったので購入しました。

 

その後座席パーツなどを2色プリントしたいのでデュアル印刷機能を持つ3Dプリンターが欲しいと思っていましたが、

マエストロの新型(MAESTRO 2.5 EX)が発売され、そこにはデュアル印刷機能があることを知ります。

手持ちのマエストロと共通部品があり、整備経験が生かせることからトラブルも最低限に抑えられるとも思い、2台目として2.5 EXを購入しました。

 

-単刀直入に伺いますが、ズバリ他社製プリンターと比べてMAESTROが優れている部分はどんな部分だと思われますか?

 

・癖はありますが表面がなめらかで、模型に使うには有利。

・プリント速度が比較的早く、安いABSでどんどん部品が作れるため、大型キットでも高い値段設定をせずに済む。

・可動部分が磁石固定式の球面軸受けなので万が一ヘッドがぶつかっても外れるため、フェールセーフ構造となっている。

・ノズルが丈夫なので定期的に清掃し、内部清掃してテフロン管を交換すれば長持ちする。

・2.0と 2.5EXで共通部品が多いのでメンテナンス性が高い。

・2.5EXにはデュアル印刷機能がある。

 

といったところが良いところだと思います。

逆に、

 

・ノズル部を外すと配線だけで宙ぶらりんになる構造なので少し清掃がやりにくい。

 雑に扱うと断線しかねないので、先端付近で配線を外せる構造にしてほしい。

・テーブルそのものはクリップ留めですが、その下のヒートベッドの温熱部はねじ止め6か所になっている。

 温熱部を外さないと基板部の清掃や確認が出来ないので、もっと簡単に取り外しできるように手締めねじにするか、

 クリップ構造にしてほしい。

 

といったところが今後の要望です。

 



<最後に>

 

-MAESTROについてのご感想、有難うございます。気になる部分については、今後の商品開発に生かしてまいります。

 最後に今後の展望を教えていただけますか?

 

 1/72航空機プラモデルで続々と大型の新作キットをリリースして海外販売していき、Nゲージ、HOゲージなどの組み立て式の動く自動車や鉄道模型(新交通システムやモノレールなどの案内軌条式鉄道、通常の粘着式鉄道、索道、鋼索鉄道など)をリリースしていきます。

独自考案した構造で、そこそこの出来栄えで他社よりも安めの価格設定で出せる予定です。

 

模型事業が軌道に乗れば、ロボットの開発を行いたいと考えています。

異なる種類のロボットが組織的に指揮命令系統を持って行動し、マルチタスクが可能なシステムを開発したいです。

 

これらの組織型ロボットは欧米向けにパッケージ販売。

治安維持警備、軍事、インフラ維持整備、再生可能エネルギー事業や大規模農林業、資源の再生や確保などに使える組織型ロボットを広範囲に開発し、自ら運用及び販売事業を展開していきたいです。

 

そしていずれはそこに学習能力を持った人工知能を搭載し、ロボットだけで完結するシステムを生み出すのが今後の夢です。

 

-壮大な展望をお聞かせいただきました。目標をかなえることが出来る様、我々も応援させていただきます。

 本日は、様々なお話を頂きまして、本当にありがとうございました。